新型コロナは世界に大きな影響を与えています。日本でも連日の報道が行われていますが、インドネシアも例外ではありません。
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究チームによる集計によれば、12月6日(日)0:27現在で以下の数字が報告されています。
・感染者数:569,707人
・死亡者数:17,589人
こうした状況下において、「埋葬」や「火葬」についても大きな影響を受けています。
今回、火葬文化の研究を行う学会「火葬研」の年次大会「火葬研大会」で、発表をさせていただく機会に恵まれました。インドネシアからの参加なのでZoomを使っての登壇です。
今回のブログでは、その内容と、コロナ禍におけるインドネシアの埋葬事情をいくつか紹介します。
【研究発表】インドネシアに現存する火葬場について
今回の年次大会では「第2部」と「第3部」に参加させていただきました。
・第2部:研究発表
・第3部:公開討論会(パネリスト登壇)
まず第2部の「研究発表」では、富山大学の遠山和大先生と共同で「インドネシアに現存する火葬場の予察調査」(Preliminary investigation of Active Crematoriums in Indonesia) と題する発表を行いました。
ブログでも紹介しましたが、発表内容は「火葬研」の年報『火葬研究』(Cremations Studies)にも掲載されました。
なお今回の発表は、昨年発表した論文「東ジャワ・マランの火葬場 – イスラム圏の華人社会における火葬文化」(Crematorium in Malang, East Java – Cremation culture in Chinese society in the Islamic area)に続く、第2弾という位置づけです。
【公開討論会】コロナ禍における葬送のあり方、世界での違いは?
続いての第3部は公開討論会です。テーマは「世界からみたコロナ禍で生じた葬送に対する考え方の違い」というもの。パネリストとして参加し、発表と意見交換に参加させていただきました。
いただいた発表テーマは「インドネシアでの街の状況と葬送」で、具体的には以下の5点についてお話ししました。
- インドネシアでの現在の街の状況
- インドネシアでの葬儀・火葬に対する規制
- インドネシアの火葬場での対応
- コロナ禍の中で、インドネシアの葬儀社が気をつけたこと
- インドネシアの葬祭業者や火葬従事者への対応
東ジャワのマランにある火葬場にヒアリングを行い、コロナ禍においてどのような変化があったのかを調査。その具体的な実態を紹介しました。
コロナ禍におけるインドネシアの埋葬事情、どんな変化があった?
発表させていただいたのは、現地の火葬場における具体的な事情です。しかしインドネシア全体を見てみると、コロナ禍における埋葬事情には、さまざまな変化が起きています。
ここではメディアで取り上げられた大きな出来事として、2つのトピックを紹介します。
ジャカルタ州政府「感染者埋葬に関するガイドライン」で4時間以内の埋葬を義務化
「ニューズウィーク日本版」は2020年4月、「新型コロナウイルス死者急増のインドネシア 厳重梱包での死後4時間以内の埋葬を義務化」と題する記事を発信しています。
インドネシアの中でも首都ジャカルタの状況を取り上げたもので、州政府が「感染者埋葬に関するガイドライン」を策定したことを紹介。コロナ死者は、同ガイドラインに沿った葬儀と埋葬が義務化されたことを伝えています。
具体的には宗教の別に関わらず、感染可能性のある遺体は4時間以内の埋葬が義務付けられました。またプラスチックで遺体を密封した上で遺体袋におさめて棺に安置するという徹底ぶりです。棺そのものもプラスチックで密封された上で消毒液の散布が求められます。
一方、コロナ遺体は土葬されるということもあり、墓地周辺の住民による反対運動や妨害活動も、インドネシアのメディアで報道されました。警察官が派遣され、妨害活動の取締や遺族の警備、埋葬作業員の支援をおこなう等が決まりました。
なおコロナ感染者の埋葬場所として指定されたのは、東ジャカルタのポンドック・ランゴン墓地、そして西ジャカルタのトゥガル・アルール墓地の2カ所の公共墓地です。
東ジャカルタのポンドック・ランゴン墓地
西ジャカルタのトゥガル・アルール墓地
コロナ遺体の強奪まで。埋葬方法に不満を感じる宗教的背景も
2020年8月になると、読売新聞が「新型コロナで死亡の遺体、墓地や病院から強奪相次ぐ…インドネシア」との内容を報じています。
「遺体をラップで包んでから、棺に入れて埋葬する」という感染防止策に対し、棺を使う習慣のないイスラム教徒たちが反発している旨の内容です。
このため、遺族が病院や墓地で遺体を取り返そうとする事例が起きたり、埋葬職員を襲ったりする事例が生じているとの現地報道を紹介しています。
「オンラインで火葬事情を発表する」という体験
今回は、コロナ禍インドネシアの埋葬事情について、火葬学会でパネリスト発表に参加した経験をまとめてみました。
何かを発表したり、パネリストとして登壇する機会は、以前にも何度か経験していますが、「オンラインで登壇する」というのは初めての機会でした。
今回の「火葬研大会」に参加したのは、会場参加が30名前後、オンライン参加が20名前後で合計50名ほど。オンラインでの発表がうまく伝わるか不安でしたが、反応を聞いてみると意外と伝わっていたようで、ひと安心・・・。ぜひまた、こういう機会にはチャレンジしてみたいなぁと。
コロナが終わっても、こうした参加形態はどんどん増えていくでしょうね。「オンラインでもうまく伝える技術」は、今後さらに重要なスキルになるのだろうなと実感させられた次第です。
【参考】第22回 火葬研大会(研究発表会2020)プログラム
今回の火葬研の発表会のプログラムは以下のとおりです。
【参考】インドネシアのコロナや火葬に関するブログ記事
こちらの記事も、ぜひどうぞ。